From 藤井聡@京都大学大学院教授AD2014.03.18(TUE)
AD2014.03.18(TUE)PbdP>
From 藤井聡@京都大学大学院教授
先週は,原田氏,岩田氏,浜田氏が「活字」として残している言説を,より豊富(長期的等)なデータで検証したところ,彼等の主張が「否定」される結果となった,という指摘をいたしました.その後,いくつかの感想やコメント,つぶやきなどがあったようですが,当方が指摘した疑念を晴らす明快な反論,説明は,今のところ,拝見してございません.
万一そうしたものがございましたら,(ウェブのコメント欄等通しまして)是非,お知らせいただけますと幸いです.
丁度今,STAP細胞論文の主張がホントかどうかが新聞テレビを賑わしておりますが(←無論,他機関でも再現されればホントと認定される見通しです),本件についての当方からの指摘も,その基本的な問題構造は同じではないかと感じております.すなわち,今,問われているのは,知性や知識量以前に,「研究者/学者の誠実性」なのではないか,という次第であります.
....
さて,それはさておき,以前,飯田氏との討論の中で,飯田氏が言及しておられましたが,いわゆる,「建設業の供給力問題」が,様々な論者,メディアで指摘されています.
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/02/25/fujii-77/(飯田氏)
http://news.goo.ne.jp/article/php/business/communications/php-20140218-03.html?pageIndex=2(原田氏)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014021802000134.html(東京新聞))
http://mainichi.jp/select/news/20140221k0000m020141000c.html(毎日新聞) 等
そして国会でも,そうした議論を受けて,同様の議論が展開されているようです.例えば,福田昭夫衆議院議員は,今年の2月18日の衆議院本会議で,次の様に国交大臣に質問しておられます.
「国土強靱化、消費税の引き上げの際の景気対策の名のもとに、公共事業予算を急激に増加させたことで、資材高騰や人手不足などによる、公共事業の中止がふえています。国土強靱化も景気対策も看板倒れとなるおそれが強く、建設業界の実情を無視した公共事業偏重の予算編成に、無理があるのではないでしょうか。」
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0001/main.html
ついては今週は,この「建設業の供給力問題」について,改めてお話したいと思います.
なお,このひっじょーに(!)複雑な問題で,数行のコメントや数百字程度のメッセージでは,その全容を浮かび上がらせることはほとんど不可能です
ついては通常のメルマガよりは少々ややこしい内容となりますが(というか,当方のメルマガは最近その傾向が強いですね 笑),重要な問題ですので,少々しっかり目に記述したいと思います.是非,最後までお付き合い下さい.
【1】実際の契約率から見れば,「公共事業の制約問題」は生じていない!
上記の様に,福田氏は「資材高騰や人手不足などによる、公共事業の中止がふえています」とおっしゃっています.
たしかに,公共事業を矢って(x::矢って,◯::やって)欲しいという政府の呼びかけ(いわゆる入札)に「誰も手を挙げない」等のケースは増えています(これが,不調・不落,というものです).
しかし,一端,不調・不落となった案件は,もう一度,政府は,呼びかけの条件を見直して,再び「入札」することが一般的です.
で,何度入札しても,不調不落が続けば,最後は「公共事業が中止」されることになりますが,二度目,三度目で誰かがその仕事を請け負うことになれば(=「契約が成立」すれば),「中止」されることはありません.
では,そんな「中止」が多いのかどいうと....決してそんな事は無いようなのです!
先の福田氏の質問に対して,太田国土交通大臣は,次の様に回答しておられます.
「実際に、国土交通省の公共事業予算につきましては、十一月末時点で約七〇%が契約済みであり、昨年度同時期を上回る水準で予算の執行がされているところであります。」
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0001/main.html
昨年度11月と言えば,「コンクリートから人へ」のスローガンを掲げた民主党政権下で,予算額が,今よりも1.5兆円以上も少なかった時代です.
そんな公共事業が少なかった時代よりも,今年度の方が,実際に,「契約が成立」しているのです!
これは,福田氏を含めた多くの方々が,「事実誤認」をしておられることを意味しています.
この「事実誤認」は,「不調・不落」というものと「最終的な契約成立/不成立」とは,少々異なっていることからくる誤解だと言えるでしょう.
(なお,不調・不落が起きているのは,「大型建築工事や条件の厳しい工事」(太田大臣談)などが中心のようです(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0001/main.html).
ちなみに,大型「建築」工事は,実際に受注して工事をしている間に,追加作業が増えていく危険性が高い案件だそうです.つまり,不調・不落は,「受注すると,結局,損するんじゃないか?」というリスクが高い案件に集中しているようです.
なお,今年に限って,そんな不調不落が多いのは,去年よりも1.5兆円分発注が多いので,建設業者ができるだけ利益率の高い案件を受注したいと考え,業者が「選り好み」をしているからのようです.
ですが,不調不落に終わった場合,政府は,より業者にとってリスクが少ない方向に条件を見直して,再入札するようです.で,結果,それを2,3回繰り返せば,誰かが応札し(手を挙げ),最終的に契約が成立するケースが多いようです.その結果,昨年よりも,契約率が上回る程の円滑な発注が可能となっているようです).
【2】建設業者は,相当無理をしつつ「人手不足」をギリギリ,クリアしている
とは言え,建設業者の人手不足は明確に存在しており,「人集め」には,相当苦労をしておられるのは,紛う事なき事実のようです.
人手不足なのに,政府案件の「契約率」は高水準を保っているというのは,どういうことかというと....建設業者が,相当「無理」をして人をどうにかこうにか集めて,ナントカ工事を進めている,ということが実態のようです.
同様に,資材調達,機材調達についても,建設業者が「無理」をして集めているようです.
では,建設業者が,どの様に「無理」をしているのかというと(筆者がゼネコンさん,地方ゼネコンさん,下請け業者さん等,様々な業者さんのお話を伺ったところ)要するに,
「ナントカ人や資材を集めるために,本来なら自分の儲けとしてもらえる分を削って,労働者に高い賃金を払ったり,高い金額を資材に払ったりして,凌いでいる」
ということが平均的な実情のようです.つまり,建設業者が必死にムリをしながら対応をして,供給力不足はぎりぎりのところで回避されている,という次第です.
ただし,その「ムリの仕方」には,いくつかのパターンがある様です.
筆者が行ったヒアリング調査によりますと,少なくとも,元請けが「大手ゼネコン」の場合と「地方建設業」の場合とで,大きく事情が異なるようですし,職種によっても異なります.
以下,それぞれ説明したいと思いますが,それに先だって,基礎知識として,建設業の人材には,少なくとも以下の三種類の人材がおられることをご理解いただきたいと思います.
・「事務員」(オフィスでペーパーワークする方)
・「技術者」(正式には施工管理技術者.現場監督)
・「職人さん」(左官屋さん,鉄筋工さん等含む,現場で働く労働者)
これらの内,「事務員」さんは,必ずしも不足しているわけではなく,問題となっているのは,「技術者」と「職人さん」の両者であります.
(A)「職人不足」をクリアするための業者対応(地方建設業の場合)
まずは「職人さんの不足問題」について,かつ,地方建設業が受注したケースについて考えてみましょう.このケースでは,この「職人不足問題」をクリアするために,地方建設業者さんが,致し方無く「よい条件(高い賃金)」を提示して,どうにか職人さんをかき集めておられるのが一般的なようです.
しかし,政府が建設業者に支払う「人件費」は,そうした事情を反映したものではなく,あくまでも「定額」となっています.
したがって,「ナントカ仕事を終わらせなきゃ」と考る建設業者は,「自分の利益」を削って,無理をして人集めをしているという次第です.
同様に,高騰した資材についても,半ば「自腹を切る」ようにして,高いオカネを支払って集めているようです.
なお,こうした状況があるが故に,「良い条件でなければ受注しない業者」が増え,条件の悪い案件を中心に,不調・不落が増えているようです.
したがって,的確に発注ができるようにするためには,「設計労働単価」(政府が支払う人件費を計算する際の単価)をあげることが必要となります.また,それ以前に,実際に使った「のべ労働者数」を,きちんと勘案して発注することも必要です.そもそも,それすらきちんと反映されていないケースが多々あるようなのです.
つまり,「実際に建設業者が支払った金額を,政府がきちんと建設業者に支払う」という,一般常識から考えれば当然の基本を守ることが,「建設業者に過剰に寄ってしまったシワ」を解消するために求められているようであります.
(B)「職人不足」をクリアするための業者対応(大手ゼネコンの場合)
一方,大手ゼネコンさんの場合は,少々事情が異なります.それは,大手ゼネコンさんは,(下請け会社等も通して)職人さんを「抱え込む」事ができるからです.
職人さん達としては,「大手ゼネコンに抱え込まれれば,安定的に仕事をもらえる」と考え,少々「安い賃金」でも引き受ける傾向が強くなります(ここが,地方建設業者との違いです).
その結果,大手ゼネコンさんが受注した案件では,最終的に職人さんに支払われる金額は,安い水準になってしまいがちです.
この問題を適正化するためには,大手ゼネコンさんが受注したケースでも,政府が大手ゼネコンさんに支払った「設計労働単価」を,職人さん達(あるいは下請け業者)に的確に支払うように,きちんと指導していくことが必要となります.
ただし,大手ゼネコンにしても,「資材価格の高騰があるため,工事途上で余分な出費が増えている」ため,利益を確保するためにはどこかを削らなきゃ...と考え,その結果,下請けさん達や,職人さん達への支払いを削り,彼等に「シワ寄せ」をしてしまっているようなのです.
ですから,こうした「不当に安い賃金」「不当に安い下請け業者への支払い」という問題を抜本的に回避するためには,実際にかかった経費をゼネコンさん達に「政府」がきっちりと支払う,という,これもまた「当たり前」の体制が整えられることが必要なわけです.
(C)「技術者不足」をクリアするために行っている「無理」
一方,「技術者」についても,「不足気味」な状況が生じていますが,この問題についても,建設業者は,「手持ちの限られた技術者を,無理してフル稼働させる」という形のギリギリの対応がなされています.
そもそも,技術者は,現場に最低一人ないしは二人,必ず必要です.しかも,技術者は一つの現場を担当すると,安全管理等の点から,複数の現場を見ることが(基本的に)禁止されています.
ただし,作業量が多い現場では,実質上,一人や二人ではなく,四人,五人とたくさんの技術者を配置することが求められる現場も数多くあるようです.
その結果,各建設業者は,手持ちの技術者に,1)主に担当とする現場を割り振ると同時に,2)少しでも余裕がある場合に他の現場を手伝わさせる,という対応を図るようになっているようです.
つまり,各技術者は,正式に担当する現場を一つだけ持つと同時に,他の現場についても,時間の限り(それこそ,睡眠時間も最小化し,休日を返上して)必死になって手伝っていく,という対応を取っているようです.
つまり,技術者不足の問題をクリアするために,各技術者に相当な「しわ寄せ」が行っているようなのです.
ですから,この問題を解消するには,技術者の業務内容の見直しを政府の方で検討すると同時に,中長期的な視点に立って,各建設業者が技術者を雇い,育て上げるという「人材育成投資」を各建設業者に促していくことが必要でしょう.
【3】(幸か不幸か!)来年は特に,「建設業の供給力問題」が生じる事はなさそう
この様に,現時点では,
「政府から出された公共事業の案件の多くは,
人件費や資材費の高騰によって,「不十分な値段」にか過ぎなくなっているものの,
多くの建設業者は,利益が十分出ない事も半ば覚悟しつつ,ナントカ受注している.
その結果,全体の契約成立率は,昨年よりも高い水準となっており,
どうにかこうにか,政府発注の公共事業は,進められている」
という状況になっているようです.
つまり,新聞やエコノミストの議論でいわれる「建設業の供給力制約問題」は,現時点では,建設業者達の必死の踏ん張りによって,「ギリギリ(!),生じていない」というのが,実情の様に思われます.
実際,様々な業者の方々から,「来年度の四月以降,受注できる余裕はある」という声を様々に伺っております(地域,業態によっては難しいという所もありましたが,余裕がある,とうい声の方が,少なくとも筆者が伺った範囲では多かったです)
しかも,(当初予算と補正予算を併せた)公共事業関係費は,来年度は,トータルで,おおよそ1.3兆円も「削減」(!)される見通しです.
http://gohoo.org/alerts/131229/
それが良いのか悪いのか....の議論はここではさておきますが(苦笑),それを考えますと,次年度以降の「供給力不足問題」は,より一層,生じにくい,と考えることができるでしょう.
逆にいいますと,少なくとも現状のままでも,「1兆円強の公共事業費の増額」は,大きな障害なく,可能だということができるでしょう.
【4】デフレ脱却&供給力増強に向けて!
ただし,今,ナントカ供給力制約がクリアできているのは,「建設業の関係者の相当な無理」があってのものだという事を忘れてはなりません.
繰り返しますが,今のままでは,地方建設業者や下請け業者は「彼等の利益を削って」人や資材をかき集めて対応しているのであり,職人さん達の一部は(大手業者に囲い込まれることの見返りに)不当に安い賃金で辛抱しており,多くの技術者は(全く労働時間にはカウントされないのに)「不眠不休」に近い状況下で仕事をこなしているのです.
これでは,「デフレの緩和」が十分に進むとは思えません.なぜなら,技術者や特定企業に「囲い込まれて」いる職人達は,「不当に安い賃金」で働かざるを得なくなっていると同時に,一部業者を除いて,多くの建設企業において「正当な収益」は得られていないからです.
そもそも,デフレ脱却とは,企業収益があがり,賃金が上がる事ではじめてもたらされるものです.
もちろん,こうした実情にある今日でも,大幅に公共事業費が削られていた民主党政権下よりも,建設業者を巡る状況は改善しているとは言えるのですが,それでもやはり,現状の建設業界は十分に「デフレ脱却」の状況に届いているとは言えないのです.
では,建設業界におけるデフレ脱却を企図するためには何が必要かと言えば,各企業が「適正な利益を」上げる事ができ,労働者の賃金が上昇していくことが必要であり,そのために,業界の様々な実情を踏まえた,きめ細かな是々非々の対応が不可欠だ,ということになるでしょう.
その取り組みの内容は,以上の報告の中で随所に主張しましたが,改めて記載すると,以下の様になります.
(対策1)実際にかかっている,職人さん達への賃金を,十分に反映した金額を,政府から建設業者に支払うようにする(=設計労働単価をさらに見直す:主として地方建設業者さん受注案件の場合)
(対策2)政府が支払っている「設計労働単価」が,正当に,下請け業者や労働者に支払われるようにする(=政府からそうした勧告を行う,同時に,建設にかかる人件費,資材費といった各種の“実費”を,的確に政府から元請けに支払うようにする:主として大手ゼネコンさん受注案件の場合)
以上は,「職人さんの労働者不足」に対する対策ですが,これが進めば,建設の現場に,職人さんはたくさん「戻ってくる」でしょうし,新しい労働者も,建設の職人さんになろうとすることでしょう.
そもそも,建設業の職人さんたちの賃金は,他の職種に比べて過剰に低いのです.
平均労働賃金に比べて,彼等の年収は実に70万円も低いのです!
それ故,職人さん達の多くは,トラック運転手や宅急便,あるいはコンビニのアルバイトなどに「転職」していき,かつ,若い人が就職しなくなっている,とのこと.
この状況を改善する,上記(対策1)(対策2)の取り組みを進めれば,建設の現場に,若い人達も含めた労働者が戻ってくるのではないかと,筆者は考えています.
なお,以上の二つの対策に加えて,以下の対策も重要となると,筆者は,一学者として,「個人的」に考えています.
(対策3)安易に,安い外国人労働者を,建設現場に導入することを避ける.
そもそも,「安い外国人労働者」を大量に建設現場に導入すれば,建設業の労働市場でさらに「デフレ圧力」が強力にかかってしまい,日本人の労働賃金はさらに低下してしまうでしょう.そうなれば,現在の職人さん達の収入が減るばかりではなく,職人さん達は建設業からますます離れ,人材不足問題は,さらに深刻なものとなっていくでしょう.
つまり,建設供給力を補うために「安い外国人労働者」に手をだしてしまえば,「事態はさらに悪化」する事が強く懸念されるのです!
外国人労働者の導入問題について検討しておられる関係各位には,是非とも,こうした「深刻な危惧」を十二分に理解していただいた上で,冷静,かつ,理性的に議論いただくことを,一学者として,心から強く祈念したいと思います.
次に,「技術者」問題については,まずは,
(対策4)技術者の「作業量」「作業内容」の適正化
が,重要な取り組みとなるものと考えます.
そもそも,今の建設事業の能力問題は,「受注者」側にあるだけなのではなく,「発注者」側にもあります.
かつては,公共事業が今の倍程度もあった頃には,国交省にも自治体にも,建設系技術者が豊富に配置されていました.ところが,度重なる公共事業バッシング,公務員バッシングを背景に,建設系技術者の公務員は大きく削減されました.結果,かつては発注者側の技術者が行っていた作業の多くが,受注者側で対応しなければならなくなってしまいました.
同時に,公共事業に対する,国民側からの様々な「疑心暗鬼」を背景として,様々な細かい規制やチェック項目が増え,結果として,技術者の業務量も増大してしまいました.
こうした影響で,今の建設業者の技術者の負担は,かつてに比べて膨大なものとなってしまっており,これが,実質的な「技術者不足」を招いてしまっているのです.
こうした作業量を見直し,限られた技術者でより多くの業務を適正に処理していくためにも,不要な規制等がないかチェックし,必要に応じて規制等を見直すと同時に,政府や自治体内部の「技術者」を中長期的な視点から増やしていくことが必要でしょう.
さて,以上に述べた行政上の取り組みと並行して,やはり,建設企業内の「技術者」を増やしていくこともまた,当然ながら,必要です.
そしてそのためには,各企業がじっくりと「人材育成」を行い,土木工学を大学や高専で学んだ新卒の学生を「雇いあげていく」ことが不可欠です.
これは,企業にしてみれば「長期投資」になりますから,こうした長期投資を促すためにも,
例えば,飯田氏( http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/02/25/fujii-77/ )が繰り返し主張しておられた様に,
(対策5)「長期的な公共投資計画を,政府がしっかりと提示していく」
という事が重要となるでしょう.
それと同時に,そうした「長期投資」が可能となるような「基礎体力」を各企業につけていくことも重要です.そのためにも,今のように,各企業が半ば「自腹を切る」ようにして,賃金や資材を買っている状況を回避し,「正当な利益」が得られる状況を,一日も早く創出していくことが不可欠でしょう.その意味でも,上記の1)2)の取り組みは重要な意味を帯びる筈です.
そして,そうした状況ができあがれば,建設業者は,人材育成という長期投資だけでなく,「重機の購入」という投資を始めることとなるでしょう.
そうなれば,建設供給力はますます上昇していくこととなり,復興も防災も,オリンピックの準備等も,強力に進めていく事が可能となるでしょう.そして何より,洪水,大雪,土砂崩れ,地震,津波等の天変地異が起こった時に,各地の建設業者が的確かつ迅速に対応していくことも可能となり,我が国の国土は,抜本的に強靭化されていくことも可能となるでしょう.
....
以上,いかがでしょうか?
少々長いお話でしたが,「建設業の供給力不足問題」というものを,できるだけ正確に語るためには,建設業の現場の実態をできる限り細かく把握し,かつ,長期的大局的なビジョンで考える事が求められるのではないかと,筆者は考えます.
その意味において,以上の筆者の調査では未だ,漏れ落ちている側面もあろうかと思いますが,少なくとも,
「建設供給力不足問題は,現場の建設業者の踏ん張りで,今のところ,メディア上で言われている程には深刻なものとはなっていない」「ただし,建設行全体の構造的な問題は実に様々に存在しており,それらを一つ一つ確認しながら一つ一つ粘り強く改善していくべきである」「それと同時に,長期的な計画を国家として制定していくことが必要である」
という,本稿でお話した三点については,おそらくは間違い無きところではないかと思います.ついては引き続き,この問題については調査と考察を重ね,折りを見てご報告差し上げたいと思います.
(...でも,やっぱ,なんだかちょっとややこしいなぁ...とお感じになった方は,本稿に今一度,お目通し願えますと大変有り難く思います!).
また,関係者各位におかれましては,是非とも,上記の
(対策1)~(対策5)に示した「5つの提案」
をしっかりとご吟味願えますと,誠に有り難く存じます.
....ということで,また来週!
<藤井聡からのお知らせ>
「バ〇につける薬」なんてあるのか?なんて素朴にお感じの方,是非,兵庫県の芦屋までお越し下さい!
http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=236248&userflg=0
「実践的にいろんな問題を考えたい...」という方は,是非,「土木チャンネル」,ご試聴下さい.毎週,月曜日に配信しています!